私が初めて磁気のパワー、それが人体に影響力をもっているということを知ったのは、数十年以上も前のことである。
私は大正九年生まれだが、私たちの年代の母親というのは、だれも和裁をやったものだ。私の母親もやはり和裁が好きで、年中和裁をやっていた。ただこの和裁は、根を詰めると、かならず肩のこりをもたらす。私の母もよく、「肩がこった、こった」といっていた。私もひまなときは、よく肩叩きをしたものである。
そんなある日、母に、「いい磁気のバンドが出たから買ってきてくれないか……」と言われ、早速バンドを買ってきて母の左腕にはめてやると、肩こりがとれるというのである。
それが、私が磁気と出会ったきっかけだった。
それ以来、すっかり忘れていた磁気バンドのことを思い出したのは、母の遺品を片付けている時のことだった。
母の鏡台から、あの磁気のバンドがでてきたのだ。懐かしく思いながら、腕にはめてみると、すっと肩が楽になった。
不思議な力に引き寄せられるように、私は磁気の勉強を始めたのである。
いろいろと磁気に関する資料を読んでいるうちに、磁気の影響する範囲を「磁場」といい、その磁場の部分を血液が流れると、その血液に磁気が影響して、微弱な電気を発生させ、その微弱な電流が血液のイオン化を促進し、それが血行をよくして肩のこりをとるということがわかったのである。
ここで磁場というのは、磁力線の存在する場所のこと。磁力線とは、磁力の方向を表わす曲線のことである。
そのとき初めて、目にみえない磁気の存在を知る。
この磁気が生体に与える効果の素晴らしさは、血液のイオン化を促進させるだけでなく、直接自律神経に働きかけ、自律神経のバランスを整えるところにある。
自律神経が血液の循環をはじめ、消化、代謝、生殖など生命を維持するうえでの基本的な機能の調整をつかさどっている以上、これが調えられれば、ほとんどの病気がよくなるというのも、ある意味では当然であろう。
これが、生体に磁気を流すことによって健康を得る基本原理だ。