磁気治療器というと、体に装着するものというイメージが強かったのは、私が開発した交流磁気治療器が出現するまでは、圧倒的に永久磁石の治療器が多かったからである。
永久磁石を使った治療器の歴史は古く、中川博士が調べたところによると、昭和二十九年頃に、磁気を帯びた指輪が市販されていたということである。ただ当時は、医学的な根拠もなく、また現在のような薬事法による規制もなかったために、いわゆる民間療法の類にすぎないものだった。
だが、昭和三十六年七月より、磁気を応用した治療器は、厚生大臣の製造認可を受けなければ、作って販売することができなくなった。
逆に言えば、この規制が生まれたことにより、磁気治療器そのものが社会的に認知され、ひとつの巨大な医療産業市場をつくりだしたともいえる。
私が交流磁気治療器を開発するについて、もっとも苦労したのが、この薬事法の規制をクリアすることであった。この認可をもらうためには、最低でも二つの病院の臨床データを添えて、厚生省に提出しなければならない。
大メーカーなら簡単にできることも、私のような電々公社を退職した一介の技術屋がやるとなると、それは容易なことではない。
たとえば、あのガンの特効薬といわれた丸山ワクチンが、いまだに薬事法をクリアできないでいるのをみても、いかにこの規制を突破することが難しいことか、おわかりになるであろう。