平成元年六月、豊橋市で行った講演会が終了した時のことである。

男の赤ちゃんを抱いた若いご夫婦と母方の祖母がみえられた。相談の内容は、「この子(二歳三カ月) は、生まれたときから先天性脳性マヒと診断され、手も足もくたくた、首も全く座らず、食欲も余りなく、発育不全で治療方法は全くないといわれて、寝かせたまま育ててきました」ということで、「このような子供にも、磁気治療の効果はあるのでしょうか」ということであった。

私が男の子を抱いてみると、お話のとおりに手・足とも力が入らず、首も手でおさえていないと前か後ろに倒れてしまい、目もうつろであった。

「私の体験では、このような赤ちゃんは先天的なものではなく、お産の時の酸素欠乏が原因である場合が多いので、治療をしてみる価値が十分あります」と、いくつかの例をあげて説明した。

早速、三台の治療器を使って、一日十分・計八回の治療を始めてもらった。

三ヶ月後に再び豊橋を訪れた際、見せていただいたその赤ちゃんは、まだ十分とは言えないものの、生き生きとした周囲に対する反応を見せ始めていた。

そして、さらに一年治療を続けた結果、この子はなんと祖母に手を引かれて歩けるまでになったというのである。

ただふとんの上に寝ているだけだった子供が、磁気を頭にかけただけで、一年後に見事によみがえってくれた。

私は、いまさらながらこの仕事を続けてきて良かったと、しみじみ思った。

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