■日下史章(くさかちかあき)
昭和16年神奈川県生まれ。東京医科大学を卒業後、東京警察病院外科に入局。5年間勤務したのち、日下医院を開設した。平成2年に磁気医学物理療法研究所を併設。8年には「帯状疱疹後神経痛(PHN)に対するパルス磁気療法及び全身性交流磁気治療の試み」で、医学博士号を取得している。

私が30年前に開業したころ、帯状疱疹(ヘルペス)の患者さんは
1年間に数人しか診ませんでした。
ところが現在は、1カ 月に数人の患者さんが来院します。
年間の発症例は10万人に300〜500人と言われ、
増加の一途をたどっている病気の一つです。
帯状疱疹は、手遅れになると厄介な病気です。
見過ごされやすい早期診断が極めて重要になり、まずは病気に対する正しい知識を持ってください。

帯状疱疹の原因はウイルスです。
子供の頃にかかった水疱瘡のウイルスが、治ったあとも神経細胞の中に潜んでいて、
何らかのきっかけで、免疫力が弱ったときに発症します。

免疫力が低下する理由には、さまざまなものがあります。
疲労やストレス、外傷などのショック、それから老化などによって引き起こされます。
一般的に高齢者に多く、60代を超えると発症率が高くなる傾向にありますが、
20〜30代の患者さんも少なくありません。

最初の症状は、チクチクした痛みから始まります。
まれに両側ということもありますが、通常は体の左右どちらか、
痛みの部分がぽつっと赤くなり、胸や背中、顔などの神経に沿って、
瞬く間に帯状の疱疹が広がっていきます。
しばらくすると、そこに水ぶくれが集まってでき、濁って黄色くなったあと、
黒いかさぶたへ変わっていきます。

皮膚の症状は2〜3週間でおさまりますが、このあとに
患部の神経痛だけ悪化することがあります。
これを帯状疱疹後神経痛と言います。
帯状疱疹のウイルスにより神経が変性され、焼けるような激しい痛みに襲われます。
抵抗力の弱い高齢者に多い症状ですが、1カ月以内に痛みをとらないと、
極端に治りが悪くなります。

帯状疱疹は初期治療がものすごく大事です。
1回目の適切な治療で結果が決まると言っていいでしょう。
忙しいからといって2〜3週間放っておくと、神経が変性してしまい、
帯状疱疹後神経痛を発症する可能性が高くなります。

まず帯状疱疹の治療で最初に使うのが抗ウイルス剤です。
これは飲み薬、塗り薬のいずれか一方を使うのが一般的です。
痛みがあれば消炎鎮痛剤、患部がジクジクして感染する恐れがある場合は、
抗生剤を併用することになります。
症状がかなり深刻なときは、抗ウイルス剤を点滴で入れたり、
一緒にステロイドホルモンを使うケースもあります。

繰り返しますが、最も大切な、痛みに対する初期治療が遅れてしまうと大変です。
皮膚にチクチクとした痛みが出て、疱疹が出来はじめた段階で、
「もしかして帯状疱疹かもしれない」と疑いすぐに専門医に診断してもらう
という知識があれば、随分と治癒率は高くなります。
知っていると、知らないでは、その後が大きな違いになってしまう病気と言えるでしょう。

帯状疱疹でもっとも厄介なのは、神経痛だけが後に残る場合です。
こうしないため、初期治療に全力を傾けます。帯状疱疹後神経痛の特徴は、
どんな神経ブロックも効かないことです。
アルコールで神経を殺しても駄目です。
最終的には手術で、脳の痛みを感じる部分を壊してしまう人もいるくらいです。
耐えがたい痛みは、ガンに匹敵するとも言われ、ペインクリニックの分野では、
解決すべき最も大きな課題になっています。

もう一つ、帯状疱疹には厄介なことがあります。
それは症状が出た神経の支配領域に沿った内臓に、ダメージを与えることです。
例えば肝臓の上にできた場合、検査をすると必ず肝機能が低下しています。
胃の上だと、潰瘍ができていることも珍しくありません。
単に皮膚の表面におきている病気ではなく、その下の内臓にも注意が必要です。
原因は免疫機能の低下ですから、とくに高齢者の場合、
ガンとの関連も疑ってかかる必要があるでしょう。

このように内臓まで弱ってしまうため、帯状疱疹になると食欲がなくなり、
余計に回復が遅れてしまいます。
加えて激しい痛みが伴なうと、眠ることもできなくなり、
どんどん精神的に追い込まれていきます。
高齢者の方は、これで参ってしまうことが多いのです。

悪化した帯状疱疹後神経痛に、決定的な治療方法はないと言われますが、
当医院では痛みを和らげるため、交流磁気治療器を活用してきました。
多くの患者さんが症状を軽減し、数少ない治療法として効果をあげてきたものの、
痛みの改善度は、あくまでも患者さんの申告によるものです。
これをデータとして蓄積し、客観的に示すのは難しい作業でした。

ところが最近、アメリカで末梢知覚神経の障害度を、
定量的に測定できる装置が開発されました。
これにより治療の前後で、痛みがどのように変化したのか、
数字でみることができるようになったのです。

この装置を用い、帯状疱疹後神経痛をはじめとした痛みの改善に、
交流磁気治療器がどのような効果をあげるのか、臨床的な観点から
研究成果をまとめ学会に発表しました。
これまで感じていた治療効果を、具体的な数値で示せたと思います。
患者さんにとって耐え難く、施しようのない痛みであることを考えると、
この結果から十分に、交流磁気治療が数少ない
有効な治療方法であると分かってもらえるでしょう。

疱疹のできる場所に注意
胸から背中、顔やお腹などよくできる場所はありますが、
帯状疱疹は体中のどこにでもできます。
例えば、目の周りにできると失明の危険もあるので、
水ぶくれができる場所によっては注意が必要です。

水ぶくれを破らないように
最初にできる水ぶくれは、破らないようにしてください。
爪や皮膚に付いている菌に感染し、化膿することがあります。
こうなると、皮膚が治りづらく、痕も残りやすくなります。
水ぶくれが破れそうなら、入浴も控えた方がいいでしょう。

まずは心と体を安静に
体が健全な状態であれば、自分の中にあるウイルスの働きを抑えることができます。
抵抗力が落ちて、抑え切れなくなって発症する訳ですから、
まずは安静にして、肉体的、精神的な疲れをとりましょう。

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