「痛みの専門家」として名高い仲野義康先生ですが、今回は「ぜんそく」について語っていただきました。

 ■仲野義康(なかのよしやす)
昭和14年横須賀に生まれる。昭和39年三重大学医学部卒業・三重大学病院胸部外科入局。その後、東京白十字病院・北里大学病院麻酔科・国立療養所神奈川病院、麻酔科医長・横浜桐峰会病院を経て、昭和60年仲野医院開業。現在に至る。
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「ぜんそく」の多くはアレルギーに分類されますが、
アトピーなど他の疾患と決定的に異なるのは、死んでしまう可能性があることです。
私が経験した症例で、駅で倒れて運ばれてきた、30代男性の症例があります。
意識はなく、わずかに呼吸があるだけ。
血液中の酸素が不足するチアノーゼで、全身が真っ黒でした。
すぐに呼吸を確保するため気管に管を入れましたが、
肺浮腫から心不全の兆候まであり、肺が広がりません。
極めて危険な状況でしたが、このときに役立ったのが「肺は腎を制す」という東洋医学の考え方です。
利尿剤を同時に使いながら、2時間くらいかけて酸素を送り込み、
ゆっくりと肺を広げていきました。
翌日には歩いて帰りましたが、
場合によっては死ぬということを、最初に指摘しておきます。

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「ぜんそく」はアレルギー反応によってヒスタミンが遊離し、
気管に浮腫をおこす症状です(図を参照)。
これにより気道が狭くなり、
結果として酸素を取り入れることができなくなります。
「ぜんそく」には様々な段階がありますが、一般的な治療法は、
浮腫をおこし狭くなった気管を広げるというものです。
バイ菌などの異物が入り、粘膜等が示す防御反応を、
炎症と呼ぶのが一般的です。
しかし「ぜんそく」の場合は、
気管の浮腫を無菌性の炎症ととらえて治療をしています。

次は「小児ぜんそく」から、成長によってどのような変化があるのかを説明しましょう。
「ぜんそく」に悩む子供たちが、成長していく様子を、
身近でみてきた医師の立場からお話します。
「ぜんそく」と体力の間には、密接な関わりがあります。
5歳くらいから、何度も発作を繰り返す子がいました。
今はクラリネット奏者として活躍していますが、
当時、この子は根本的に体力がないのだと気付き、治療の方針を変えました。

前回も述べたように、漢方の考えでは、体力をつけてあげられます。
彼を含めて同じような症状だった10人くらいに、
小児虚弱体質に効果的な、「小建中湯」を飲ませました。
東洋医学でいう「脾胃」を強める漢方薬です。
体重40㎏を目安に太らせていくと、見事に結果が分かれます。
あまりにもアレルギー反応が強く、Igが一ケタ違うという例を除けば、
ほとんどの場合、漢方で体力をつけることにより発作はでなくなりました。

全般的な傾向として、中学や高校へ進むと、ほとんど発作はおきなくなります。
この間は、ものすごく体力を獲得していく時期だからだと思います。
次に重要なのは社会人になってからです。
子供の頃の「ぜんそく」がおさまっても、
このくらいから、再び発作に悩まされる人が出てきます。

これは社会の歪みと、大いに関係ありと考えます。
ストレスにさらされ、自分で生活をコントロールできなくなる。
そこで体力が落ちてくると、再び「ぜんそく」の症状がでてくるのです。
フランスはかぜをひいて会社へ行くと怒られますが、
日本は高熱が出ないと休めません。
それでも頑張って、倒れた人が立派なのですから、
馬鹿げているとしか言いようがありません。

先ほど、「ぜんそく」は治る訳ではないと言いました。
つまり、体力でカバーできているとき症状はでません。
何かの原因で体力が落ちると、再び症状が出てくる可能性が高いのです。
しかも大人の場合は、他のアレルギー症状とは異なり、
死んでしまう可能性があります。

子供のときは「ぜんそく」でなくても、大人になってから症状がでることもあります。
例えば、かぜで気管支の炎症を繰り返しているうち、
「ぜんそく」になることがあり、その際はただの咳止めでなく、
特別な治療が必要です。
もう一つ、慢性の副鼻腔炎を持っている人も要注意。
治りづらいこの病気も、引き金になるのではと疑っています。

このように、成人してからも細心の注意が求められる「ぜんそく」ですが、
予防や治療の観点に立つと、体力を高めることが重要になってきます。
交流磁気治療器は全身治療を基本としますが、
部分的に当てる場合は、脊髄が良いのではないかと思います。
ここの神経を刺激すれば、必ず腸管運動が活発になります。
加えて食事のあと、腹部に当てるのも効果的でしょう。
いずれにせよ、先ほど申し上げたように体力とは、
「脾胃」を強めることです。
1〜2カ月ではなく、長期に渡って治療器を使い続けてください。

「ぜんそく」と交流磁気治療器の関係ですが、理屈から言えば、血流を良くすることで、
発作が起こることはないと思います。
もっとも発作がおきやすいのは、寝入りばなや、目が覚めるときです。
つまり交感神経と副交感神経が切り替わるとき、
神経のバランスが変化するときに発作がおきやすいので、
血流が良くなることと、直接の因果関係は考えにくいと思います。
脇から胸を挟むか、長い目で見ると脊髄やお腹が効果的でしょう。

繰り返し説明してきたように、「ぜんそく」は体力との関わりが大きい病気です。
体力とは何か、具体的な話はコラムに書きましたので、そちらを参考にしてください。

新聞などでも伝えられているように、「ぜんそく」の子供が過去最高に達するなど、
この病気になる割合は年々増えています。
私はこうした現状に、強い危機感を抱いています。
前回の花粉症に続いてアレルギーを取り上げましたが、
根っこにあるのは同じ問題です。
清潔な環境に育ち、人間として持ち合わせているべき抵抗力を、
獲得できていない子供が増えています。
だから、わずかな爆射にも、過剰反応を示すのです。
「ぜんそく」をはじめとしたアレルギー症状は、
これからも確実に蔓延していくことになるでしょう。

「ぜんそく」が厄介なのは、大人になって再び症状が出てくる可能性があることです。
しかも最初に述べたように、場合によっては死んでしまうことがあります。
本当に危ないということを、声を大にして警告しておきたいと思います。
抵抗力は大人になって獲得できるものではありません。
子育てのあり方からはじまり、
私たちの生きる環境について、今こそ抜本的に見直すべきです。

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