交流磁気治療を中心に、食事や毎日の生活習慣、心のあり方などを含めて、総合的な健康創りをシリーズで考えています。日下医院の院長、日下史章先生にいく つか関心の高い症例を取り上げ、健康や医療を見つめ直していきたいと思います。今回は「おしりの病気(痔)」について、お話しいただきました。

■日下史章(くさかちかあき)
昭和16年神奈川県生まれ。東京医科大学を卒業後、東京警察病院外科に入局。5年間勤務したのち、日下医院を開設した。平成2年に磁気医学物理療法研究所 を併設。8年には「帯状疱疹後神経痛(PHN)に対するパルス磁気療法及び全身性交流磁気治療の試み」で、医学博士号を取得している。

ある大学病院の統計によると、日本人の約75%は、現在または過去に、
痔の経験があると答えています。
食事にたくさんの繊維質が含まれ、和式のトイレで、いきむことが多かった日本人は、
昔から痔に悩まされていたと言われます。
しかし、これほど多くの人が痔主(じぬし)であるにもかかわらず、
痔に関する知識は、あまりにも乏しいのが現実です。
イメージだけにとらわれるのではなく、この機会に、正しい知識を持ってください。

まずは痔の種類と、解剖学的にみた肛門周辺の組織から説明しましょう。

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まずは痔の種類と、解剖学的にみた肛門周辺の組織から説明しましょう。
痔の中で最も多いのは、男女とも約半数を占めている痔核です。
いわゆる「いぼ痔」ですが、できる場所によって2つのタイプがあります。
図1に示したように、歯状線と呼ばれるギザギザの線があり、
ここを境に上は直腸、下は肛門というふうに分かれています。
両者は発生的にみると異なる細胞で、上部は自律神経の、
下部は知覚神経の支配を受けています。

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この歯状線の上にできるのが内痔核、下にできるのを外痔核といいます。
内痔核は自律神経支配なので、最初は痛みもなく出血するのが特徴です。
一方の外痔核は、知覚神経の支配を受けるため、
出血に激しい痛みをともないます。
比率としては、内痔核が8割と圧倒的に多く、
外痔核は2割程度となっています。

 

日常生活で様々な障害と苦痛をもたらすものの、痔核ができるのは

とても単純な仕組みと言われます。

分かりすくいえば、おしりの血行不良によって生じる、

静脈のタンコブです。

図2に示したように、直腸・肛門の周辺は血管が複雑に交わっており、

静脈の末端は毛細血管が毛玉のようになった、静脈叢が発達しています。

これが便秘などによるいきみ、長時間の立ちっぱなし、

座りっぱなしの姿勢などによって血行障害を起こし、

いぼ状に膨らんだ痔核をつくります。

主な原因が血行障害ですから、交流磁気治療が効果的なのです。

痔の2種類目は、いわゆる「切れ痔」と呼ばれる裂肛です。
太くて固い便を排出する際、肛門の出口付近が切れることによって生じます。
図1に示したように歯状線の下側なので、激しい痛みを伴うのが特徴です。
傷口が新しいうちはいいのですが、何度も同じ場所が切れて、
慢性化した潰瘍状になると、肛門が狭くなって排便障害を起こします。
これにより便秘がひどくなり、
さらに固い便が出て、排便時の痛みが激しくなるという悪循環に陥ります。

裂肛の治療は、手術が最も効果的です。ji_3.jpg
潰瘍状になった部分をレーザーで焼き切り、
新鮮な組織を縫い合わせます。
その際、粘膜の処理だけでなく、
肛門括約筋の繊維を
数本切ることによって、
痙攣して狭くなっている
肛門部を広げます。
裂肛は図3のデータからも分かるように、
便秘になりやすい女性に多い症状ですから、
その点にも注意が必要です。

3種類目は痔瘻(じろう)で、「あな痔」と呼ばれることもあります。
図1に示した、肛門線から分泌液を出す肛門小窩という小さな穴に、
便に含まれた大腸菌などが侵入、最初は炎症をおこします。
これを肛門周囲膿瘍といい、激しい痛みや発熱を伴います。

貯まった膿みが出れば、症状は改善していきますが、
そのあと肛門の周辺にトンネルができてしまい、これが痔瘻になります。

膿みの混じった分泌液が出たり、肛門周辺に湿疹や皮膚炎ができるなど、
不快な症状を伴うのが特徴です。こちらの治療も裂肛と同じく手術で、
患部を開きレーザーで焼き切り、組織の再生を促すことにより、
トンネル部分をふさぎます。

以上のように、痔には3つの種類があり、治療の仕方は、
生活療法、薬物療法、交流磁気をはじめとした
物理療法から成る「保存療法」と、
患部にメスを入れる「手術療法」に分かれています。
自己診断ではなく、きちんと医師の診察を受けてから、
症状にあった治療法を選択してください。

以前、約100名の痔核患者さんに対し、患部へ直接作用する
経直腸のパルス磁気治療を試み、学会でその治験報告を行いました。
こうした経験も踏まえ、循環障害を主な原因とする痔に対して、
磁気治療が有効な物理療法の一つであることは証明されています。

具体的な作用としては、まず磁気固有の性質とされる鎮痛効果があげられます。
もう一つは、治療器から発する熱が、生体を温める誘導加温効果です。
交流磁気による痔核治療では、患部を温めることによる循環不全の改善とあわせて、
鎮痛効果も加わるため、痛みを伴わず治療できることが、大きな特徴と言えるでしょう。

もう一つ、全身性の交流磁気治療を行うメリットとして、
痔の原因となる便秘の改善があげられます。
前述したように痔核の病態は、循環改善をすれば、大半は治ってしまうものです。
患部のみでなく、全身の血流改善は欠かせないことであり、
手術後の回復や予防の面からみても、交流磁気治療は有効な選択の一つになります。

ウォシュレットなどが登場したことで、随分とトイレの環境も変わってきました。
昔に比べて快適になった分、痔を予防しやすくなったといえるでしょう。
とはいえ、ライフスタイルの変化で、その他の危険因子も増えていますから、
痔にならないようにするのは、やはり毎日の生活が大事になります。
後のコラムで、痔を予防するための8カ条を紹介していますので、
循環障害をおこさない、日頃の健康管理に心がけてください。

多くの人は、痔になると隠しておこうという心理が働くため、
早期に適切な措置がとりづらい病気です。
とくに女性は恥ずかしいというのが先立ち、じっと我慢し続け、
症状をこじらしてから来院することが多いのです。女性は妊娠すると、
骨盤の中に赤ちゃんがいるため、どうしても周辺の血管が圧迫されます。
出産後の女性に痔が多くなるのは、こうして腰から下の循環が悪くなり、
お尻のまわりの血流が滞ってくるからです。

便秘もそうですが、このように女性が痔になる要因は、男性よりも多くあります。
正しい知識を持って、早期に治療していけば、恐れる病気ではありません。
こじれる前に早めの受診、そして予防の観点から、
日常の生活習慣を、もう一度見直してみてください。

1おしりは、いつも清潔にしましょう。

2長時間、同じ姿勢を続けないようにしましょう。

3おしりや腰を冷やさないよう注意しましょう。

4便秘にならないよう気をつけましょう。

5排便のときは、無理にいきまないようにしましょう。

6毎日、おふろに入りましょう。

7下痢をしないよう気をつけましょう。

8アルコールや刺激物等は控えめにしましょう。

痔の予防だけでなく、悪化や再発を防ぐ目的で、
日常の習慣を改善する「生活療法」です。
ここでは、8カ条を示しておきました。
ポイントになるのはお尻を清潔にすることと、お尻の血行を悪くしないことの二つです。
これをよく読んで、予防に役立ててください。

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