交流磁気治療を中心に、食事や毎日の生活習慣、心のあり方などを含めて、総合的な健康創りをシリーズで考えています。日下医院の院長、日下史章先生にいく つか関心の高い症例を取り上げ、健康や医療を見つめ直していきたいと思います。今回は「おしりの病気(痔)」について、お話しいただきました。
| おしりの病気
ある大学病院の統計によると、日本人の約75%は、現在または過去に、
痔の経験があると答えています。
食事にたくさんの繊維質が含まれ、和式のトイレで、いきむことが多かった日本人は、
昔から痔に悩まされていたと言われます。
しかし、これほど多くの人が痔主(じぬし)であるにもかかわらず、
痔に関する知識は、あまりにも乏しいのが現実です。
イメージだけにとらわれるのではなく、この機会に、正しい知識を持ってください。
まずは痔の種類と、解剖学的にみた肛門周辺の組織から説明しましょう。
まずは痔の種類と、解剖学的にみた肛門周辺の組織から説明しましょう。
痔の中で最も多いのは、男女とも約半数を占めている痔核です。
いわゆる「いぼ痔」ですが、できる場所によって2つのタイプがあります。
図1に示したように、歯状線と呼ばれるギザギザの線があり、
ここを境に上は直腸、下は肛門というふうに分かれています。
両者は発生的にみると異なる細胞で、上部は自律神経の、
下部は知覚神経の支配を受けています。
この歯状線の上にできるのが内痔核、下にできるのを外痔核といいます。
内痔核は自律神経支配なので、最初は痛みもなく出血するのが特徴です。
一方の外痔核は、知覚神経の支配を受けるため、
出血に激しい痛みをともないます。
比率としては、内痔核が8割と圧倒的に多く、
外痔核は2割程度となっています。
日常生活で様々な障害と苦痛をもたらすものの、痔核ができるのは
とても単純な仕組みと言われます。
分かりすくいえば、おしりの血行不良によって生じる、
静脈のタンコブです。
図2に示したように、直腸・肛門の周辺は血管が複雑に交わっており、
静脈の末端は毛細血管が毛玉のようになった、静脈叢が発達しています。
これが便秘などによるいきみ、長時間の立ちっぱなし、
座りっぱなしの姿勢などによって血行障害を起こし、
いぼ状に膨らんだ痔核をつくります。
主な原因が血行障害ですから、交流磁気治療が効果的なのです。
| おしりの病気
痔の2種類目は、いわゆる「切れ痔」と呼ばれる裂肛です。
太くて固い便を排出する際、肛門の出口付近が切れることによって生じます。
図1に示したように歯状線の下側なので、激しい痛みを伴うのが特徴です。
傷口が新しいうちはいいのですが、何度も同じ場所が切れて、
慢性化した潰瘍状になると、肛門が狭くなって排便障害を起こします。
これにより便秘がひどくなり、
さらに固い便が出て、排便時の痛みが激しくなるという悪循環に陥ります。
裂肛の治療は、手術が最も効果的です。ji_3.jpg
潰瘍状になった部分をレーザーで焼き切り、
新鮮な組織を縫い合わせます。
その際、粘膜の処理だけでなく、
肛門括約筋の繊維を
数本切ることによって、
痙攣して狭くなっている
肛門部を広げます。
裂肛は図3のデータからも分かるように、
便秘になりやすい女性に多い症状ですから、
その点にも注意が必要です。
3種類目は痔瘻(じろう)で、「あな痔」と呼ばれることもあります。
図1に示した、肛門線から分泌液を出す肛門小窩という小さな穴に、
便に含まれた大腸菌などが侵入、最初は炎症をおこします。
これを肛門周囲膿瘍といい、激しい痛みや発熱を伴います。
貯まった膿みが出れば、症状は改善していきますが、
そのあと肛門の周辺にトンネルができてしまい、これが痔瘻になります。
膿みの混じった分泌液が出たり、肛門周辺に湿疹や皮膚炎ができるなど、
不快な症状を伴うのが特徴です。こちらの治療も裂肛と同じく手術で、
患部を開きレーザーで焼き切り、組織の再生を促すことにより、
トンネル部分をふさぎます。
以上のように、痔には3つの種類があり、治療の仕方は、
生活療法、薬物療法、交流磁気をはじめとした
物理療法から成る「保存療法」と、
患部にメスを入れる「手術療法」に分かれています。
自己診断ではなく、きちんと医師の診察を受けてから、
症状にあった治療法を選択してください。
| おしりの病気
以前、約100名の痔核患者さんに対し、患部へ直接作用する
経直腸のパルス磁気治療を試み、学会でその治験報告を行いました。
こうした経験も踏まえ、循環障害を主な原因とする痔に対して、
磁気治療が有効な物理療法の一つであることは証明されています。
具体的な作用としては、まず磁気固有の性質とされる鎮痛効果があげられます。
もう一つは、治療器から発する熱が、生体を温める誘導加温効果です。
交流磁気による痔核治療では、患部を温めることによる循環不全の改善とあわせて、
鎮痛効果も加わるため、痛みを伴わず治療できることが、大きな特徴と言えるでしょう。
もう一つ、全身性の交流磁気治療を行うメリットとして、
痔の原因となる便秘の改善があげられます。
前述したように痔核の病態は、循環改善をすれば、大半は治ってしまうものです。
患部のみでなく、全身の血流改善は欠かせないことであり、
手術後の回復や予防の面からみても、交流磁気治療は有効な選択の一つになります。
| おしりの病気
ウォシュレットなどが登場したことで、随分とトイレの環境も変わってきました。
昔に比べて快適になった分、痔を予防しやすくなったといえるでしょう。
とはいえ、ライフスタイルの変化で、その他の危険因子も増えていますから、
痔にならないようにするのは、やはり毎日の生活が大事になります。
後のコラムで、痔を予防するための8カ条を紹介していますので、
循環障害をおこさない、日頃の健康管理に心がけてください。
多くの人は、痔になると隠しておこうという心理が働くため、
早期に適切な措置がとりづらい病気です。
とくに女性は恥ずかしいというのが先立ち、じっと我慢し続け、
症状をこじらしてから来院することが多いのです。女性は妊娠すると、
骨盤の中に赤ちゃんがいるため、どうしても周辺の血管が圧迫されます。
出産後の女性に痔が多くなるのは、こうして腰から下の循環が悪くなり、
お尻のまわりの血流が滞ってくるからです。
便秘もそうですが、このように女性が痔になる要因は、男性よりも多くあります。
正しい知識を持って、早期に治療していけば、恐れる病気ではありません。
こじれる前に早めの受診、そして予防の観点から、
日常の生活習慣を、もう一度見直してみてください。
| おしりの病気
1おしりは、いつも清潔にしましょう。
2長時間、同じ姿勢を続けないようにしましょう。
3おしりや腰を冷やさないよう注意しましょう。
4便秘にならないよう気をつけましょう。
5排便のときは、無理にいきまないようにしましょう。
6毎日、おふろに入りましょう。
7下痢をしないよう気をつけましょう。
8アルコールや刺激物等は控えめにしましょう。
痔の予防だけでなく、悪化や再発を防ぐ目的で、
日常の習慣を改善する「生活療法」です。
ここでは、8カ条を示しておきました。
ポイントになるのはお尻を清潔にすることと、お尻の血行を悪くしないことの二つです。
これをよく読んで、予防に役立ててください。
| おしりの病気
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